24時間365日の訪問診療・訪問看護を提供

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理事長インタビュー

在宅医療が当たり前の選択肢として、
地域に広がる未来を目指して
高齢化社会に伴い、首都圏を中心にニーズが高まっている在宅医療。人口10万人あたりの病床数が全国平均を上回る北海道でも、今後急速に需要が増えてくると予想されています。東北や東京で長年、病院医療に携わってきた理事長の吉崎秀夫が、北海道で「札幌在宅クリニックそよ風」を開業した経緯と在宅医療にかける思いを語ります。

体と心の両面から
人を診る
「全人的医療」
に魅力を感じて

理事長の吉崎は、学生時代からあこがれていた北海道で在宅医療に取り組んでいる

私が医師を志したのは、人の役に立つ仕事がしたいと思ったことがきっかけです。できれば人と接し、直接誰かの役に立ちたい。そう考えて、1978年に東北大学の医学部に進学しました。

当時はすでに臓器別専門医療全盛期でしたが、大学で医学を学ぶうちに病んだ臓器を診るだけでは不十分ではないかと感じるようになりました。体と心を切り離さずに人間そのものを診ていこうとする「全人的医療」に魅力を感じ、卒業後は東北大学病院の心療内科医局に入局しました。

心療内科医局で3年間、心の面のことや心身両面から患者さんにアプローチする方法論を学んだのち、体の面もしっかりと学び直す必要性を強く感じ、医局を出て会津若松市の竹田綜合病院で内科全般を3年間、東京の虎の門病院で消化器内科を7年間学びました。

在宅医療に初めて接したのは、そのように私が医師としてのキャリアを積み上げていたころです。

医師になって8年目、
北海道で在宅医療と
初めて出会う

全人的医療を志す吉崎にとって、最初の訪問診療の経験は鮮烈だった

会津若松市の病院に勤めたあと、34歳のときに1年間だけ北海道の地方都市の病院で働いたことがあります。そこで担当した40歳代の胃がんの女性が、私の在宅医療の最初の患者さんです。本人とご主人に末期の胃がんであることを伝え、今後どのように過ごしていきたいかうかがうと、小さな子どももいるので、できれば自宅で過ごしたいというご希望でした。

当時は介護保険制度ができる前で在宅医療の黎明期でしたが、北海道のその病院では先進的な地域医療に取り組んでいて、院長に相談すると二つ返事で訪問診療を許可してくれました。病棟で患者さんを受け持っていた看護師が訪問看護を担当し、勤務の間に訪問診療に出かけることになりました。

ご自宅を訪問すると一番小さなお子さんはまだ2歳で、部屋の中をかけずりまわっています。港町だったので、夕食どきになるとおいしそうな刺身が食卓にずらっと並んで、先生も食べていかないかという話になる。何もかもが病院医療とは異なる経験でした。

病院では患者さんの生活は見えませんが、在宅医療では患者さんがどんな家に住み、家族とどんな風に暮らしているのかが意識せずとも見えてきます。患者さんのホームグラウンドで、患者さんやご家族の意志を尊重しながらじっくり時間をかけて診察できるところが、病院医療と在宅医療の最も大きな違いだと思います。

この患者さんは、約3ヶ月間ご自宅で過ごされました。亡くなる前日に入院されましたが、ご自宅での療養を私が最期まで全責任をもって担当し、最初に志した「全人的医療」が実現できたという深い手応えを感じました。このときの経験が、私の在宅医療の原点です。

その後、虎の門病院に勤務し、消化器内科は完治できないがんの患者さんが多く、ご自宅での療養を希望される人が多いことから、いつかは在宅医療をやってみようと考えるようになりました。

あこがれの北海道で、
在宅医療専門
クリニックを開業

50歳を過ぎてクリニックを開業した吉崎。2018年に還暦を迎えた

私は東京出身で、医学部時代や地方勤務期間を除いて30年近く東京に住んでいました。そんな私が北海道で開業することになったきっかけがあります。

大学生のときに北海道を初めて旅し、豊かで懐の深い大自然に感銘を受け、その後何度も訪れるうちにいつしか住んでみたいと思うようになりました。医師としてのキャリアを磨き自信もついてきた41歳のとき、妻と子どもも賛成してくれたことから札幌移住を敢行しました。

札幌は人口190万人の大都市で、生活の利便性という面では東京と比べてそん色はありません。職住が接近しているので時間的にゆったりとした生活が送れますし、のびのびとした環境のなかで子育てをしてみたいという人にはもってこいの土地ではないかと思います。

札幌に10年住んで50歳を過ぎたとき、これから先の医師人生で何をしようかといろいろ考え、一番やりたかった在宅医療に取り組んでみようと決心しました。

一人ひとりの患者さんに、
じっくり向き合える喜び

クリニックに待機当番制を導入してから、趣味の渓流釣りを楽しむ時間のゆとりもできた

私は病院医療に25年間携わり外来、入院、検査、救急、当直と目が回るような忙しさのなかでずっと仕事をしてきました。そのため、時間をかけてじっくりと話をしなければならないような場面でもその時間が取れないことに大きなジレンマを感じていました。開業するにあたって外来や検査機能を設けることも思案しましたが、手を広げ過ぎると結局は勤務医時代と同じように時間に追われることになってしまうのではないかと考え、思い切って在宅医療専門でやることにしました。

長年研鑽してきた内視鏡検査をやめてしまうことは決心がいりましたが、在宅医療専門にしたことで、患者さんに十分な時間をかけて一人ひとりとじっくり向き合えている確かな実感があります。

ご自宅を訪問すると病気のことからはじまって、その人の人生にまつわるような話をしたり、1時間なんてあっという間に過ぎてしまいます。忙しい病院医療のなかでは考えられないことですが、在宅医療では日常的なことなのです。

患者さんを受け入れてほしいという近隣の医療機関からの相談は多く、忙しいことはありますが、勤務医時代と比べて忙しさの質が違うためストレスは少なくなりました。

在宅医療は24時間365日対応が原則になります。医師1人で対応しようとすると大変ですが、当クリニックでは複数の医師を採用し、夜間や週末は待機当番制を導入しています。非番のときには完全にフリーとなるので、オンとオフがはっきりとつけられる生活になりました。プライベートな時間の余裕もできて、趣味の渓流釣りや旅行も楽しんでいます。

在宅医療に
取り組んでみたい
意欲がある人と、
共に未来を見据えて

スタッフとの情報共有や、スタッフが働きやすい環境づくりにも力を注いでいる

当クリニックでは、併設している訪問看護ステーションの看護師や居宅介護支援事業所のケアマネジャーとお互いに十分に情報を共有できるように毎朝スタッフ全員でカンファレンスを行っているほか、週に1度医師同士で担当の患者さんについて議論する時間も設けています。

一緒に働いてくれている医師は、きっかけも専門もさまざまです。在宅医療はどんなスキルが必要とされるか不安だという人もいるでしょう。しかし最も大切なのは、知識や技術よりも「在宅医療に関心があるかどうか」だと私は思っています。

病気(臓器)だけを診るのではなく、病気をもった一人の人として、患者さんの生活や人生にまで寄り添って全人的医療をやってみたいと思っている人。ワークライフバランスを大切に考えて、イキイキと生きている人。そんな人と志を共にして、この仕事に取り組んでいきたいと考えています。

私は50歳を過ぎてから訪問診療をはじめましたが、勤務医だった昔の自分に今の私が何か声をかけるとしたら、「もっと早くにはじめるべきだよ」と言いたいです。働き盛りの30代、40代こそ理想的なスタートラインだと思います。

在宅医療をはじめてから、これまで専門外だった神経難病の患者さんにも接するようになり、人生における病気の意味、それに関わる家族のあり方といったものを深く考えさせられ、私自身の人生観、死生観に大きな影響を受けたというようなこともあります。

一般にはあまり見えておらず、医師の私ですら知らなかったことですが、難病で病院へ通えずに大変な思いをしながら自宅で暮らしている患者さんとご家族が、街のなかにはたくさんいます。医師でありながら今までできなかったさまざまな仕事上の経験、人生の経験ができるのが、非常に重いことではあるけれどもこの仕事の尊い部分だと思います。

在宅医療は、今後日本の医療のなかで病院医療、外来医療と並んで3本の柱のひとつになることは間違いないでしょう。当クリニックのある町内会の人たちも在宅医療に強い関心をもっているので、今後は街の人々との交流も深めていきたいと考えています。

在宅医療の現場は訪問看護師やケアマネジャーなど多職種の連携が欠かせませんが、「多職種」という言葉のなかにはサービスを受ける側の人が入っていません。街の人々が何を考え、医療者に何を望んでいるのかを知ることも我々の大事な使命です。

病気になったら病院へ行くのが当たり前であるように、病院へ通えなくなったら在宅医療を受けられることが選択肢のひとつとして当たり前になる。そんな未来にするために北海道のこの地に根を張って、地域で暮らす患者さんとご家族のために邁進していきたいと思っています。

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